2007年09月05日

たったひとつの冴えたやりかた(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア)

tatta.jpg きれいなブラッド・ミュージック

 絶賛されているティプトリーの名作。ブラッド・・・がイマイチだったので、2年半ぶりに彼女の作品を読んでみた。
(毎度の少女チックな表紙は、やはり恥ずかしい

 設定はブラッド・・・に似ているが、舞台が宇宙であることや、適度に短編であることから、わかりやすくスマートだ。

 あまりSF色が濃くないのは「夏への扉」に近いかな。

 表題作は、遺伝子レベルでのコンタクトという意味でブラッド・・・に近い作品といわれるのがよくわかるが、幼年期・・・につながるかというとそうではないと思う。

 もちろん、この作品の真骨頂はタイトルとエンディングにあるんだが、サイボーグ009やジャイアントロボのそれをイメージすると決して斬新だとは思えないのがつらい。

 鉄腕アトムも同じようなエンディングらしい(古くてよく知らない)し、映画エイリアン(3だったっけ?)もラストでヒロインがエイリアンを体内に閉じ込めたまま自殺するよね。この手のエンディングは多いのかもしれない。もちろん、本作がその先鞭かもしれないが。
(それゆえ、「涙が出ないと人間ではない」というほどではないと思う)

 作品は全部でみっつ。いずれもファースト・コンタクトもの。三者三様のエンディングだ。

 かつての恋人を振り切って冒険の旅に出る2作目が何ともいえないいい味だが、少し長すぎる。

 ・たったひとつの冴えたやりかた
 ・グッドナイト、スイートハーツ
 ・衝撃
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2007年09月04日

ガラスの仮面の告白(姫野カオルコ)

kamenkoku.jpg 性懲りもなく、再び手に取った。フィクション・エッセイというものだから。

 元々エッセイってフィクションじゃないの? と思っている私には新鮮だ。嘘や誇張がないとエッセイだっておもしろくないじゃないのかな。ちょっとキワイけれど、関西弁のノリが楽しくて一気に読むことができた。

 1990年だから、これまで読んだ中でもっとも初期の作品だった。荒削りの感覚がいいなと思う。

 作者は目次や章建てに結構こだわるみたいで、今回は少女漫画のタイトルがそのまま各章になっているらしい。「禁欲・・・」の食物シリーズならわかりやすいが、今回のこの部分はよくわかんなくっておもしろくないな。
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愛は勝つ、もんか(姫野カオルコ)

aihakatu.jpg 発表順にいえば「禁欲のススメ」と「初体験物語」の間に発行された1994年のエッセイ。

 小説っぽいのがうざかったのでエッセイにしたが、やはり底が見えた感じがして新鮮さがまったくなくなっていた。続けて読んだからだろう。

 書き手は現実に近い虚構をエッセイで語る。読み手は現実でものをみる。虚構の中からしみでてくる書き手の心の叫びを感じたいのだが、なかなかつかみきれない。

 姫野カオルコという作者の文章技術は卓越したものがあり、ハードボイルドでもなんでもかんでも書ききってしまうような筆力を感じる。写真に近い絵って感じかな。

 しかし、それは彼女の得意技ではないような気がする。だからこそエッセイでは軽い虚構を作り、その上で気楽な文章による鋭い切り口を見せてくれたのがおもしろかったのだが、なんか同じことの繰り返しに見えてきてだめだな。

 3作続けて読むともう次は読みたくない気がする。新たな展開があるのかどうか。きっとまだまだあるだろう底の深さや横の広がりを見せてほしいものだ。
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2007年09月03日

バカさゆえ…。(姫野カオルコ)

bakasa.jpg つ、つまらない。それも最高に。

 エッセイ以外のカオルコ作品を読んだ。昼休みに読める量だったので読破した。

 奥様は魔女とかリカちゃんとかあしたのジョーとかいった当時のテレビやアニメの登場人物を作者のいいように動かすって感じなんだが、先にさっぱりした文章を読んだ後だからか、装飾が多すぎる文章はこうるさい

 この作者を読むなら暇つぶしのエッセイがいいかなぁ。
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禁欲のススメ(姫野カオルコ)

kinnyoku].jpg 一気にエッセイ第二弾(発表順ではないかもしれない)。

 血液型がどうだとかいった話があってちょっと眉唾なんだが、一応すっぴんの形態をとった1991年の作品。

 もちろん、エッセイといっても事実100%ではないことはわかっているものの、それを感じさせてしまうと続きを読む気がしなくなるものだ。

 後1,2作かなぁ、カオルコさんは。ま、小説を読んでみるという手もないわけではないが。

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初体験物語(姫野カオルコ)

hatuta_.jpg 同年代である。滋賀県出身だから同じ関西人である。それだけであり、単なるエッセイは私の好みではない

 でも、装飾が施されていないすっぴんの文章は小気味よくリズミカルに読める(一話も短いし)ので通勤車内の愛読書になった。

 初めてどこそこへいったなどの初体験記なんだが、同じ世代だからわかる部分も多くて楽しめる。これは1997年の比較的新しいエッセイだが、さかのぼって後2,3冊は読めそうな感じだ。

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2007年08月31日

槍ヶ岳開山(新田次郎)

yarigatake.jpg 百姓一揆の混乱の中で妻を誤殺し、修行僧となった主人公播隆笠ヶ岳、槍ヶ岳を開山する。

 その筋だけならあまりおもしろくないが、やはり新田次郎。蘭学医の言葉を借りて頂上に出現する弥勒菩薩をブロッケン現象と切り捨てるあたり心地よい。

 主人公と訳ありの支援者の暗い影、そして亡き妻が死の直前に見せた憎悪の表情の理由などが一気に語られるラストは主人公の死とともに読み応えがあるクライマックスとなっているが、主人公の弟子の裏切りが筋の上で不要だった気がするのは読み方が足りなかったからだろうか。
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2007年08月24日

模倣犯(宮部みゆき)

mohou1.jpg とにかく長い。書きたいことが山ほどあるのはわかるが、長すぎる

 筋そのものは、犯人捜しでもなく、トリック解明でもなく、ミステリーとしておもしろいかと聞かれると個人的には首をかしげざるを得ないが、それを背景とした数々の心理描写がとてもおもしろい。

 被害者の家族の心理、犯人の家族の心理、家出少女の心理などが遠慮なく描かれている様は、この長編を読む価値を感じさせる部分だろう。

 ちょっとテーマがあちこちに飛びすぎた気がしないではないが、それぞれの小テーマがそれなりにおもしろかったのでよかったとしよう。
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2007年08月15日

恐怖(筒井康隆)

kyoufu.jpg 建物の保存運動をした文化人が次々と殺されていく。次は誰が殺されるのか。その恐怖をテーマにした小説。

 まじめそうでまじめでなく、緻密そうで荒っぽい。200ページほどなので一気に読める。そのせいもあってか、時間つぶしというほかにあまり読後感が残らない作品だった。
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2007年08月10日

わたしのグランパ(筒井康隆)

granpa.JPG 筒井康隆を読むようなタイプではないのだが、なぜか手に取った。乱読である。

 ムショ帰りの祖父を迎える中学生の孫娘とその家庭。普通の小説だった。

 雰囲気が東京タワーに似ているかなぁ。可もなく不可もなくかな。時間つぶし程度の作品だと私は感じた。
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2007年07月10日

ブラッド・ミュージック(グレッグ・ベア)

80年代版「幼年期の終わり」ねぇ

bloodmusic.jpg 期待に満ちて読んだ。でもがっかりした。

 細胞(遺伝子)レベルの知的生命体が、人類を宇宙に見立てて進化していく。人類はそれらによりその形状すら変えられるが、自身は幸福な進化を遂げていると信じている。

 私が嫌いな「電脳空間=サイバースペース」ものだ。この手の世界って嫌いだわ。なんでもありの世界っておもしろくないもの。

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2007年07月09日

ネメシス(アイザック・アシモフ)

さすがのアシモフ節だが

nemesisu.jpg 地球に鉄槌を振るうべく迫り来る恒星ネメシス。ネメシスの通過により、5千年後には地球は滅亡する。

 その事実を知る前に地球を旅立ち、ネメシス系の地球型衛星エリスロで知的生命体と遭遇しながら人類の永住地を模索するグループがある。

 一方で滅亡の危機にさらされた人類の未来を背負い、ワープを駆使してその地球型衛星へ来るグループがある。

 ストーリーはこのふたつのグループを軸に進む。

 登場人物も少なく、英雄がいるわけではないが、主人公は強く賢い女性博士たちだし、わくわくする謎解きとそれぞれのグループでそれぞれのハッピーエンドを与える破綻のないエンディングはやはりアシモフならではのもの。

 しかし、SFというには少し人間ドラマ色が濃すぎる。わくわくしたいのは筋だけではなく設定にもあるんだがなぁ、SFの場合

 作品そのものは少し期待はずれだったが、描く女性がたいていは強いことや宇宙(もしくは山)を背景とした人間ドラマを上手に描くことを考えるとアシモフと新田次郎って似ているという発見が楽しかったね。
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2007年06月26日

高熱隧道(吉村昭)

再読で再認識

kounet.jpg 若いころ読んだ。黒四ダムの黒部(大町)トンネルの話だと記憶していた。大いに違っていた。黒三ダムの欅平から仙人谷への軌道および水路トンネルの話だった。

 しかも、感動のドキュメントではなく、土木工事を背景とした人間ドラマだった。

 記憶とはあいまいだし、感想は読んだときの読み手の心境にも左右されるといういい見本だ。この意味で再読もいいものだ。

 トンネルを掘る。技師たちはひたすら穴を開けることが目的である。社運も使命感も二の次である。

 人夫たちは金が第一義である。むろん、自らの命と引き換えに。

 工事が進捗し、多くの死者が出るようになってくると、人夫たちに共通の感情が芽生えてくる。わかってはいるものの、死ぬのは常に自分たちだけであり技師は常に安全であることへのやり場のない憤り。

 一触即発のままトンネルは貫通する。技師は背に恐怖を感じながら現場を後にする。

 筋はざっとこんな感じだが、まさに戦国時代そして企業戦士たちのさまがここに描かれていると思う。将軍のために、上司のために、命を懸けるという奇麗事が多いなか、もっともっとプリミティブな部分を掘り下げたという意味で、まさに人間の心の中を掘り進む高熱隧道が本作品のテーマだと思う。

いい作品だ。
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2007年06月20日

究極のSF−13の回答−( ファーマン&マルツバーグ 編)

思わぬ拾い物で大満足

kyuukyokusf.jpg 時間軸の輪の中に閉じ込められたという筋のディックの「時間飛行士へのささやかな贈物」が読みたくて、この短編集を手にしたのだが、ロボット三原則をかなり厳しい方向で発展させたアシモフの「心にかけられたる者」のほうが圧倒的にインパクトがあった!

 フレデリック・ポールやポール・アンダースンやブライアン・W・オールディスや(このころにはまだ女性だとは思われていなかった)ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアも参戦している豪華絢爛短編集。作者自身によるあとがきなど見所は多い。大満足だ。

 作品は以下のとおり(《》内はそれぞれの作者に付与されたテーマ)。

《ファースト・コンタクト》
 ・フレデリック・ポール「われら被購入者」

《宇宙探検》
 ・ポール・アンダースン「先駆者」

《不死》
 ・キット・リード「大脱出観光旅行?」

《イナー・スペース》
 ・ブライアン・W・オールディス「三つの謎の物語のための略図」

《ロボット・アンドロイド》
 ・アイザック・アシモフ「心にかけられたる者」

《不思議な子供たち》
 ・ディーン・R・クーンツ「ぼくたち三人」

《未来のセックス》
 ・ジョアンナ・ラス「わたしは古い女」
 ・ハーラン・エリスン「キャットマン」

《スペース・オペラ》
 ・ハリー・ハリスン「CCCのスペース・ラット」

《もうひとつの宇宙》
 ・ロバート・シルヴァーバーグ「旅」

《コントロールされない機械》
 ・バリー・N・マルツバーグ「すばらしい万能変化機」

《ホロコーストの後》
 ・ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「けむりは永遠に」

《タイム・トラベル》
 ・フィリップ・K・ディック「時間飛行士へのささやかな贈物」
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2007年06月15日

地球人よ、故郷に還れ(ジェイムズ・ブリッシュ)

100ページ持たなかった

tikyujin.jpg ニューヨークがまるごと宇宙を旅して、故郷の地球へ帰るという筋に惹かれて読み始めたが、あまりにラフな設定に感情移入が出来ず、100ページ読まないうちにダウン。

 宇宙都市シリーズらしいが、この作者はもう読まないだろう。
posted by いなえしむろ at 07:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月13日

華氏451度(レイ・ブラッドベリ)

書物が自然発火する温度

451.jpg 書物を焼き尽くす使命を帯びた主人公が、本の重要性に気づいて職務を全うせず逃亡の身に。

 逃亡仲間は書物をそのまま頭脳に暗記している集団。そして世紀末戦争で世の中は灰になり・・・。

 なんて感じの映画チックな筋なんだが、私にはインパクトに欠ける。久しぶりのSFなのに残念
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2007年06月12日

梅雨将軍信長(新田次郎)

歴史小説シリーズ第二段

nobunaga.jpg 今度は信長側から見た歴史。

 信長も必死だった様子がよくわかる。一か八かの賭けに勝った信長は、その後賭けに敗れ本能寺で自刃するわけだが、それまでのクライマックスが描かれており短編ながら面白い。

 武田信玄が長すぎたこともあり、このくらいの短編のほうがピリっとしていいかもね。

 短編集だから、信長だけが出てくるわけではない。飛行機あり、天気予報ありなんだが、面白いのは算術(和算)関係の作品。2編(算士秘伝、二十一万石の数学者)登場するがいずれも鎖国時代の日本をある角度から描いたものとして興味深い。

 蘇我入鹿打倒の「大化の改新」と「時の日」をくっつけた秀作「時の日」もいい味だ。個人的にはこれが一番だった。

 富士山を背景に借りた「女人禁制」も新田次郎らしい山の作品だ。なかなかいい短編集だった。

 作品は以下のとおり。
  • 梅雨将軍信長
  • 鳥人伝
  • 算士秘伝
  • 灯明堂物語
  • 時の日
  • 二十一万石の数学者
  • 女人禁制
  • 赤毛の司天台
  • 隠密海を渡る

《書斎の文房具関係追記 -RICOH Caplio R4-》
nobu.jpg 本の表紙から信長の顔が消えているのは、Caplio R4の「斜め補正機能」を使ったため。つまり台形を補正したために補正が強く働く部分(顔の部分)が消えたということ。
(右は通常の表紙)

イマイチだな、この機能

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2007年06月10日

桜庭和志の自伝その3「ぼく…。」

なんと無料で読める

bks_bg_010.gif pdfファイルがYahooで無料公開されている。

太っ腹だねぇ


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2007年06月09日

武田信玄(新田次郎)

もし・・・が許されるなら

siungen.jpg 去年の秋から読みたかった「武田信玄」。

 歴史小説なんだから筋はわかっているし、それを変えようもないのだが、時代を語るでもなく、人物にのめり込むのでもなく、ただ淡々と語る新田節が光る

 もし、武田信玄が後少しだけ生きていたらどうなっただろうな。それを想像するのはおもしろいね。

 また、この作品は毎月30ページでちょうど100回=8年間にわたり歴史読本に連載したそうだ。ラストは、作者も感極まったことだろうなぁ。
posted by いなえしむろ at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月13日

ブレイン・ヴァレー(瀬名秀明)

2作目もオカルト色が濃い

blainv.jpg パラサイト・イブに続く瀬名氏渾身の作品。

 ハードSFっぽい専門用語の嵐に加えて人物もよく描かれている。しかし、前作同様にどうしても乗り切れない仮説が邪魔して感情移入できないのが難点。

bvy.jpg なぜ写真が2種類あるかというと最初文庫版で読み始め、下巻にさしかかった瞬間に下巻を紛失したためハードカバー上下巻セットをあわてて購入したということ。

 金かけた割にはイマイチだったなぁ。
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2007年05月08日

川の深さは(福井晴敏)

はじめての福井節

kawano_fuku.jpg 私にとってはガンダムとか戦国自衛隊のイメージが強い(=あまり好みではない)作者だ。

 予備知識なしで読み始めた作者の処女作は、最初写実的過ぎて読み疲れると思った。

 マークIIとかマルチプランとかOS2とかフロッピーディスクとか、少し前の時代を感じさせる背景に少し違和感もあった。

 しかし、読み進めるとそうした贅肉や雑感がこぼれ落ち(自分の視界から外れだしたに過ぎないかもしれない)、筋をまっすぐに追える楽しさが出てきた。

 ロボット戦士化された少年と世を捨てた元警官を軸に筋がどんどん進む。乾ききったと思われる二人が熱い情熱を持って共感していくあたりはなかなか面白い。

 全体が俯瞰できる頃になるとこの作品の面白さが味わえるようになる。スケールが大きいというか、おおざっぱというか、ある程度予想される展開も多々あるが、とにかくアメリカや北朝鮮の影を使いながら、幾度となくどんでん返しを突きつけてくるあたりに小気味よさを感じる。

 惜しいのは、少年と元警官の描写が過ぎており、ほかの登場人物が薄っぺらくなってしまうことだろうか。ほかの福井節では、脇役がどのように描かれているのか確かめてみたいな。
posted by いなえしむろ at 08:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月24日

遠い幻影(吉村昭)

私を訪ねる12短編集

tooigennei.jpg 自身を確立するため節目節目で作った作品集。

 いずれも静かにはじまり、ゆるやかな山を迎えて、静かに終わる。一気に飛ばさない。短いからこそ緩やかな展開になっている。

 物足りなさがあるものの、一語一語が重厚で味わい深い。いい作品集だと思う。

 表題作の「遠い幻影」は、主人公が幼い頃の曖昧な記憶を取材などで鮮明なものにしていくという筋。それに意味があるのかどうかわからないが「死期が迫るとそういったことをきちんとしたくなるものだ」と主人公に言わしめる作者の思いがじんじんと伝わってくる。

 私的にはこの表題作とハートウォーミングな「梅の蕾」がよかったなぁ。

 作品は以下の通り。
  • 梅の蕾
  • 青い星
  • ジングルベル
  • アルバム
  • 光る藻
  • 父親の旅
  • 尾行
  • 夾竹桃
  • 桜まつり
  • クルージング

  • 遠い幻影

posted by いなえしむろ at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月12日

海馬(吉村昭)

動物が登場する短編全7編

todoo.jpg 通勤電車の中で1話ずつ読んだ。一気に読んでしまうと登場人物がごちゃごちゃになるというか、区切りをつけながら読まないと気持ちの切り替えができなかったから。

 どれも「ふ〜ん」ってな感じで、特にねっとりした読後感があるわけではないんだが、淡々と語られるストーリーの中に登場人物の心が潜んでおり、味わいがある作品集だと思う。


作品は以下のとおり。
    ・闇にひらめく<鰻>
    ・研がれた角<闘牛>
    ・蛍の舞い<蛍>
    ・鴨<鴨>
    ・銃を置く<羆>
    ・凍った眼<錦鯉>
    ・海馬<トド>

posted by いなえしむろ at 13:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月04日

SUDDEN FICTION 超短編小説70(文春文庫)

当たり外れというか

tanpen70.jpg 各駅停車の一駅ごとに読めるから通勤時間にいいかなと思ったのだが、5駅程度でギブアップ。

 要するに面白くない。意味わからんとか、くどいとか。ショート・ショートというほど短くはないし、超短編というほど筋があるとは思えない。

 さくっと捨てることにしよう。
posted by いなえしむろ at 08:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月03日

逃亡者(城山三郎)

一日一話で時間をかけて

toubou.jpg 8話の短編集。8話目は飽きて読まなかったが、7話を読み切った。

 普段ならさくっと捨てるんだが、今回は「そのうちいいのもあるだろう」と怠惰に続けてしまった。

 愛するサンショウウオが実は教え子に食われていたというオチが光る「逃亡癖」というラス前の作品がけっこう印象に残ったが、後はイマイチ。残念だ。
posted by いなえしむろ at 19:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月18日

インヴェイジョン -侵略- (ロビン・クック)

駄作なのかこっちが飽きたのか

invasion.jpg 宇宙からの物体によりヒロインの恋人は人格が変わってしまう。異星人の地球侵略がはじまったのだ。

 とてもおもしろくないプロットだ。幼稚なSFというのか。クックが筆を誤ったのか、クック作品に私が飽きたのか・・・。

 いずれの日にか再読しようと思うが、当分はパスだな。

posted by いなえしむろ at 16:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月16日

昭和新山(新田次郎)

昭和新山を見に行きたい

syowa.jpg 行ってみたい、見てみたい。猛烈にそんな気にさせる表題作を含む全6編。表題作以外はイマイチかな。

 「昭和新山」は事実のタッチで描く記録集の感じ。「氷葬」は越冬隊が持って行くダッチワイフを通じて官僚主義への批判が刺すように光る秀作。「まぼろしの白熊」はイマイチぴんとこないおとぎ話。「雪呼び地蔵」も3人女性の遭難を描く怠惰な作品。「月下美人」は復帰直前の沖縄を舞台としたもうひとつわかりにくいロマンスストーリー。「日向灘」はメロドラマ風のB級って感じ。
posted by いなえしむろ at 10:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月07日

永遠のためいき(新田次郎)

なよなよ、いやよ

tameiki.jpg 文春文庫の本。八甲田山と同じ作者とは思えない、なよなよ本だ。

 遭難した女性3名を男性3名が助ける。その後のそれぞれの行く末を描いている。縦走路と似たタッチだ。

 往復の通勤途上で読み切れる量(230ページほど)だから一気読みしたが、途中休憩すると飽きてしまうような作品かな。つまり、イマイチ。
posted by いなえしむろ at 20:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月06日

ブレードランナー3 -レプリカントの夜-(K・W・ジーター)

いやぁ、楽しかった

br3.jpg 楽しかったの一言。

 2での伏線が見事につながっている。登場人物を極限まで切りつめて冗長さを排除したジーターの手法はいい方向に花開いている。

 読める展開ではあるが、レイチェルとサラの謎、タイレル社の謎がラストにかけて一気に解き明かされる。ネオ・レイチェルをつれたデッカードはブレラン4の余韻がありいいエンディングだ。
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2007年02月01日

ブレードランナー2 -レプリカントの墓標-(K・W・ジーター)

贋作にしては良い出来

br2.jpg ディック原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の続編というよりは、映画「ブレードランナー」の続編。

 奥が深い「ブレラン」だけれど、本作ではさらっと軽いタッチでストーリーを流している。それだけに薄っぺらい印象が色濃く残るが、一気に読めるあたりは力作と言えるだろう。

 筋としては第六のレプリカントを探すというもの。ヒロイン・レイチェルが死ぬという強烈なラストが待っているものの、続編へのつなぎも忘れない。いい作品だと思うな。

posted by いなえしむろ at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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